LとRの発音について

LとR

 朝日新聞社が毎週日曜日発行する「朝日ウイークリー(Asahi Weekly)」は、私の密かな楽しみの1つである。特に、学習院大学の真野先生が担当している『英語豆知識こぼれっぱなし』は、よく目を通していた。今回のテーマは、『こぼれっぱなし62』で扱われていたLとRの発音について自分なりにまとめてみようと思う。

① 日本語のラ行の音は英語のLでもRでもない

 日本語のラ行の音(ら・り・る・れ・ろ)は、弾き音と呼ばれる音である。一方で、英語の L と R の音は以下のように異なる。

● L音: 舌先を歯茎にしっかりつけた状態で、舌の両側から息を流す。

● R音: 舌先を歯茎に近づけつつも触れず、舌を丸める。

● ラ行音:舌先を一瞬だけ歯茎に触れさせて発音する。

 たとえば、Light(Lの音)と Right(Rの音)は日本語の「ライト」として表記されるが、実際の発音では舌の位置と空気の流れが大きく異なる。Let と Red も同様に、日本語話者には「レット」と「レッド」として同一視されやすい。

 ラ行音は日本人なら発音できるので問題ないはずだ。R音を出すコツは、「ウ」の口でラ行音を発音することで舌先が歯茎に近づきつつも触れないということを実現できる。それでも上手くいかない人は「ウ~~」と言いながら、「ウ~~Right」と発音してみよう。必ず上手く発音できると思われる。

② 外国語のLの音もRの音も、日本語ではラ行で表現される

 日本語には L と R の音の対立が存在しないため、日本人は両者を同じラ行の音として知覚し、ラ行音に置き換えて表現する。

● Lake(湖)と Rake(熊手) → レイク

● Light(明かり)とRight(右) → ライト

● Flame(炎)と Frame(枠) → フレイム

 これは音韻論的に「日本語の音素体系に存在しない音は最も近い音に置き換えられる」という現象(音素置換)の一例である。日本語話者にとって、L も R も「ラ行の音」に近いと知覚されるため、このような置き換えが起こる。

 日本語のラ行音に最も近い音は、”flapped T(はじかれたT)”である。「はじかれたT」が用いられる単語は、アメリカ英語でbutter(バター)を「バラ」みたいに T の音を柔らかくした「ラ」のように発音する時である。以下のような単語を発音する時によく出現する。

● Butter → バラ
● Water → ワラ
● City → シリ
● Better → ベラ

③ 日本語のラ行の音はローマ字ではRで表現される

 日本語をローマ字で表記する際には、ラ行の音が R で表される。これは、明治期に普及したヘボン式ローマ字の影響が大きい。以下は、ローマ字表記の例である:

● ら → Ra

● り → Ri

● る → Ru

● れ → Re

● ろ → Ro

 本来、ラ行の音はLでもRでもないが、英語話者にとっては R の方が近いと判断されたため、この表記が採用されたと考えられている。余談だが、我が娘は「リノン」という名前だが、日本人ならこの名前をローマ字表記する場合に、Rinonと書くことはあっても、Linonとは書かないはずだ。

④ 日本語話者が英語のLとRを間違えやすい理由

 以上の①〜③に起因して、日本語話者は英語の L と R を間違えやすい。これは音韻認識の転移によるものであり、特に以下のようなミスが発生しやすい。

● Flame(炎) → Frame(枠)

● Glass(ガラス) → Grass(草)

● Play(遊ぶ) → Pray(祈る)

● Liver(肝臓) → River(川)

● Blight(枯れ) → Bright(明るい)

 日本語では両者の音がラ行として統一されるため、リスニングでも誤認しやすく、発音の際も無意識に「ラ行的な音」に寄ってしまう。これは真野先生も指摘していることだが、「どちらかというと本当はLのところをRに間違えることの方が多い」と感じる。

⑤ LとRの誤りが下品な意味に変わるケース

 LとRを混同すると、日常会話で下品または不適切な意味に誤解されることがある。以下はその代表例である。

● Rice(ごはん) → Lice(シラミ)

  I like rice. → I like lice.

  (私はシラミが好きです)

● Clap(拍手) → Crap(うんこをする)

  They clapped for me. → They crapped for me.

  (彼らは私のためにうんこをした)

● Flirt(いちゃつく) → Fart(おならをする)

  He tried to flirt with her. → He tried to fart with her.

  (彼は彼女とおならをしようとした)

このような誤りは特に口語で発生しやすく、文脈次第では失礼に受け取られることもある。けれど、文脈があれば、そう多くは誤解されない。ちょっと変な奴だとは思われるかもしれないが。

結論と対策

 日本語話者がLとRの発音を正確に区別するためには、以下の対策が有効である。

● この記事の①を意識しながら、音声学的理解を深める。

● 舌の位置や口の形を意識し、繰り返し練習する。その際は、ミニマルペアの単語を用いて練習する。たとえば、”Light” と “Right”、”Play” と “Pray” などのペアを使って練習する。

● 身近なネイティブスピーカーやAIツールやアプリを活用して、自分の発音を客観的に確認する。

 LとRの区別は日本語話者にとって難しいが、音声学的な理解を深め、意識的に練習することで正確な発音に近づくことができる。お互い頑張りましょう。

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